古代の工法と自然素材が生きる和モダンな家

K.Matsunaga K.Matsunaga
須磨の家 自然の素材に、つつまれて暮らす, 株式会社seki.design 株式会社seki.design Living room لکڑی Wood effect
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古来から、人々は建築物をつくるためにさまざまな技法を編み出してきました。現在までの歴史の中で、建築技術の進化や、時代の変化によって現在ではほぼ採用されなくなった工法は無数にあります。しかし現代の方法では成し得ない、当時の工法だからこそ生み出せる風合いなどは今では惜しまれるものになり、貴重な財産となりました。今回ご紹介する住宅は、古代に用いられた「版築」という工法を取り入れた和モダンな木造住宅です。以前よりこの工法の魅力に注目していた株式会社SEKI.DESIGNが、専門家に相談しながら自らの手で研究を重ね、自然素材を生かした今回の住宅で念願の実現をかなえました。風合いや強度、実用性も兼ねたこの工法を住まい手と二人三脚で手がけたというエピソードもこの家の思い出深いストーリーとなっています。

和の趣きを感じさせる格子のある外観

外観正面には木製の格子があしらわれ、和のテイストを感じる佇まいの外観です。この格子は段階的に角度をつける工夫がされていることで、縦波のようなゆらぎが生み出されとても趣き深い表情となっています。二階部分の屋根は斜めに張り出され、すっきりとした納まりがモダンな印象を与えています。軒の仕上げには杉板を採用することで、格子との素材の調和を図り統一感のある仕上がりになっています。どこか凛とした雰囲気を感じる上品な外観は、年月を重ねるごとに味わいを増してくれることでしょう。

古代の技術によって作られた土壁と薪ストーブスペース

家の存在感の中心となるのが、この薪ストーブのある風景です。その背面にあるのが、住まい手、つくり手、工法の研究者とこの家の建築に関わる人々が協力しながら築造した「版築壁」。版築とは土壁を作る工法の一種で、建築の基礎部分にも使われたほど堅固な礎を築くことができるものです。それが耐火壁にもなるということに目をつけた建築家の提案で、薪ストーブとコラボレーションしたスペースが実現することとなりました。その独特な表情は空間に奥行を与え、堅固でありながら自然の素材であるため温もりも感じます。土の素材の特徴から、蓄熱性や調湿効果が期待でき、末永く住まい手が心地よくこの家で暮らすためのサポートをしてくれることでしょう。この版築壁を築造するときには少々大変な作業ではあったそうですが、だからこそ一層愛おしいと感じる家になったに違いありません。

土間の広がるリビングダイニング

ダイニングからリビング方向を眺めると、薪ストーブの周辺だけではなく、広く土間が取られていることに気がつきます。この土間スペースは、薪を積み上げる、入れ替える、といった作業に便利なだけではなく、より暮らしを豊かにする使い道を見据えて提案されたものです。タイルは熱や水に強いため、木質の床材には少々ハードなことでも受け入れられる素材です。水作業を伴う季節の演出や、アウトドア向けの作業も室内で行うことができ、可能性が広がる空間として楽しみは増すばかりです。

一枚板のダイニングテーブルと大黒柱

ダイニングスペースには耳つきのナラの一枚板でオリジナルのダイニングテーブルが誂えてあります。人間がひとりひとり個性があるように、木材もまたひとつとして同じものはありません。木材市場で吟味しながらセレクトしたというこの板を、棟梁の手によってこの家のために丁寧に製作されました。使い込むごとに色や風合いは味わいを増しながら食卓を彩り、毎日の食事が楽しみになるに違いありません。テーブルの隣にあるどっしりとした柱はこの家の大黒柱です。こちらも木材市場でひとめぼれをしたことで迎えることになったもので、6mの一本物であるその柱は飾りではなく、本来の大黒柱の役割を担いこの家をしっかりと支えてくれています。ひとつひとつに物語があり、また世界のどこにも同じものがないものがあることで、日々の生活はより特別な輝きを増すことでしょう。

開放感のある吹き抜け

薪ストーブを中心としたスペースからは大きな吹き抜けが設けられ、スケルトンの階段と吹き抜けの手すりでより視界が広がり開放的な空間が生まれています。ホールの天窓からはさわやかな光が差し込み、より明るさをもたらしてくれることでしょう。大黒柱を中心に、しっかりとした梁で支えられていることを感じられる空間は、木材の繊細さと力強さ、日本の木造住宅の素晴らしさと可能性ををあらためて考えさせられます。立派な木材がふんだんに使われている空間の中に、手すりや階段の部材ではアイアンが採用され、引き締まったそのシャープな黒い線はスパイスを加えモダンな仕上がりとなっています。素材の組み合わせの妙で、昔ながらの和風の家とはまた違う雰囲気を楽しむことができるリビングは、インテリアの楽しみ方も広がることでしょう。

吹き抜けから見下ろす心地よい風景

吹き抜けから1階を見下ろすと、リビングの一部となっている階段が1階と2階をつなぐものだけではもったいないと感じるはずです。リビング、ダイニング、そして2階へと、どこへも視線が届くその場所はいつも家族とのつながりを持つことのできる場所でもあります。暖かな炎を感じながら読書をしたり、薪ストーブの周りに集いながら会話を楽しんだりとまるで家具のような使い方ができる特別なスペースです。また階段の踏板には肉厚な桧材が採用され、肌触りの良さも手伝って思わず触れたくなってしまいます。家中のそれぞれのスペースの中にさまざまな配慮と可能性がちりばめられているこの家は、末永く住まい手に愛され家族と共に成長を感じることとなるでしょう。

【和モダンについては、こちらの記事でも紹介しています】

※ 和モダンな住まいにする6つの方法

※ 和風モダンの魅力

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