古民家リノベーションが成功したといえるのは、オリジナルの魅力を最大限に活かしつつ、クライアントの現在の生活スタイルに合った住まいが実現した時ではないでしょうか?今回ご紹介する一級建築士事務所ヒモトタクアトリエによるこちらの事例では、耐震性のある「強固な芯」として内側に新たな箱を挿入することでオリジナルのファサードを再現し、その魅力的な姿を取り戻しました。工夫された間取りも見どころです。では早速見て行くことにしましょう。
こちらの建物は戦前、昭和11年に建てられました。岐阜市大空襲の戦火を免れ、そして伊勢湾台風で傾きながらも耐えて、大正11年生まれのクライアントと共に生き抜いて来た岐阜市内でも貴重な建物です。もともと1階は店舗として使用され、改修前二階は倉庫として使用されていました。幾度と無く改修を重ねる間に建設当時とは異なる外観となっていた建物ですが、今回の改修でオリジナルの外観が再現されることとなりました。
通常の耐震改修は既存の構造体のフレーム内で行われます。しかし今回は古い柱や特徴的な二尺の差し鴨居などオリジナルの良さを活かす改修が計画されました。まず「よろびおこし」をし、新たにべた基礎が打たれました。「よろび」というのは建物の傾きのことで、それを起こす作業が「よろびおこし」です。さらにこの建物の最たる特徴ともいえる細脚の柱の魅力を最大限に活かすため、外壁ラインから半間内側に入ったところに耐震壁が設けられました。古い家の中に耐震性のある新たな家が挿入されたのです。
右側に見える白い壁が新たな耐震壁、左側にはオリジナルの木製建具がうかがえます。新旧の要素が違和感なく同居し、調和のとれたデザインが魅力的です。
1階には個人のギャラリーおよび高齢のクライアントの居室、浴室、トイレが配されています。こちらはギャラリーの様子。建具のない開放的な空間で街とのつながりも感じられるオープンな雰囲気のスペースです。